エラブの巫女ヨネさん2

なにやら叫びながら近づいてきたのは、やせ細った体に丈の短い和服を着たおばあさんだった。しわだらけの三角の顔、片方の目は開いてはいるが失明しているのがわかった。髪だけは黒々と光り、つよい椿油のにおいを漂わしていた。
「おお!この兄さんじゃ、このにいさんじゃ!」おばあさんは、骨ばった手で私の手をとり、「にいさんはヤァ、うちに来る事になってるチィ。」そお言うと私の手を引き歩きだした。振り返るとおじさんは、「いってみろ」と目で合図してた。
長い一本道を歩いた。家並みの終るあたりの空き地のおくに、おばあさんの家があった。低いブロックの囲いの中、右手にトタン屋根の小屋。「ここがアタイとオジの家じゃ。にいさんはこっちに住め」 左手のおおきなガジュマルの樹の下に草屋根の小屋があり、広い庭のはづれには紅い花が咲いてるではないか、その先の低地にサトウキビ畑、その向うには、たとえようもない青緑の海が見えるのだ。えがき続けたイメージが、そのまんま目の前に広がっていた。
「にいさんが来るのは分かっておったでやぁ、オジに掃除させてある。」粗末な板と丸太と萱の掘っ立て小屋だが、中はきれいに片付いていた。でもそんなことは信じられない。風景は偶然だし、ばあさんの言葉は方便さ、と思った。
だが、なにはともあれそこに住むことになった。
今日はここまで、またあした。










9月 16th, 2009 at 8:22 AM
薫太郎さんには、ずっとヨネさんのお話聞かせて頂いていましたが、こうして文字になると、お話を聞くよりもリアルに情景が見えます。とても面白いです。楽しみです。