猫伝説2
土曜日, 10月 4th, 2008わたしが中学生だった、今から五十年ほどまえ、祖母に猫を捨ててこいと命じられました。祖母の飼う猫は代々、おすはコゾ、めすはタマと言う名でした。
その時のタマはわたしが小学三年生ごろから、一人ぐらしの祖母に飼われていました。むかしからの言い伝えで、飼い猫も十年経つと化け猫になり、飼い主にあだをなすといはれ恐れられていました。それを信じる多くの人たちは、どんなに可愛がっていた猫でも、十年経つ前に、猫が戻れない遠くへ捨てたのです。
人々はそのつらさを避けるため、子猫を飼うとき「三年たったら、出ていくんだよ!」と何回も言い聞かせるのがしきたりでした。
五十年まえ、東京近郊でさえ無医村が多く、まともな医療もうけられずどれだけ沢山の人が死んだかわかりません。ましてや猫が十年も生きられるのは稀なこと、それだけで、すでに化け猫だったのです。
さて私は、祖母が布袋にとじこめたタマを入れた大きな籠を背負わされて、三キロ先の多摩川に向かいました。袋ごとタマを川に投げ捨ててこいというのです。
かわいそうなのと、化け猫がおばあさんをかみ殺す恐怖とが、体の中で渦巻いていました。多摩川までの半分も来ないときでした。背中に衝撃を感じ、かごが急に軽くなりました。ふりむくと、布袋を食い破ったタマがくさむらに走りこむのが見えました。
それっきりタマは帰ってきませんでした。それから二年後、祖母が死にました。
通夜の日、庭のすみにある小さなお稲荷さんの社の前に猫がいました。見ると、それはまぎれもなくタマでした。名を呼ぶと目で返事をし、抱こうと近寄ると,暮れ始めた夕闇のなかに姿を消してしまいました。














